廃棄物条例案への提言書全文 07/12/05

2007年12月5日

長野県知事 村井 仁 様

長野県がめざすべき条例案についての提言書

八ヶ岳周辺のごみ問題を考えるネットワーク、黒沢自由塾
中信廃棄物問題ネットワーク、環境会議・諏訪
ごみゼロの会、NPO法人・日本有機協会、はなのき友の会
さざなみ爽風塾、ゼロウエイスト・千曲、松本市行革110番
木工団地廃プラ処理場に反対する住民の会、あおぞら・北山早苗

 

−−はじめに−−

 これまでの廃棄物政策は、大量生産社会のもと廃棄物はどうしても出るものと扱われ、その処理に莫大な経費と時間を費やしています。その結果、日本は世界の焼却炉の3分の2を保有する焼却炉大国となってしまいました。ゴミ処理経費は、日本の自治体全体で年間2兆円近くにも及び、地方自治体の財政を圧迫しています。
 こうした廃棄物政策は地球温暖化対策に逆行するだけでなく、各地で環境悪化の諸問題を引き起こしています。また、「廃棄物処理の決めて」と喧伝されるリサイクルも、コストや手間、環境への負荷を考えれば、ゴミ問題の根本的解決には決してなりません。
 廃棄物を巡る危機的状況の中で、わたしたち長野県民がめざすべき廃棄物政策と条例は、どのようなものであるべきなのでしょうか。
 それは、「廃棄物の発生を徹底して抑制し、また、廃棄物の再使用、再資源化、適正処理を行うことで、廃棄物に起因する環境負荷をできる限り低減すること。それにより、自然環境や生活環境の破壊、汚染の防止を図り、長野県の豊かな自然環境の保全と、県民の健康、安全、快適な生活を確保する」ことをめざす条例でなくてはなりません。
 今回、県で策定をしている『廃棄物の適正処理の確保等に関する条例案』には、残念ながら、このような一番大切な視点が欠けています。「廃棄物の適正処理が行える施設を造れば良い」というだけの姿勢では、今日、県民が直面している様々な廃棄物にかかわる問題は解決できません。
 そこで私たちは、長野県がめざすべき廃棄物条例の『基本に据えるべき視点・項目』と、『欠かすことのできない内容』について、以下のように提言いたします。


<条例の基本に据えるべき視点、項目>

  1. 発生抑制

     今回の『廃棄物の適正処理の確保等に関する条例案』には、「発生抑制」という、今日の廃棄物をめぐる一番の問題点が欠落している。新条例案では、名称どおり「廃棄物の適正処理の確保」に対象範囲を狭めており、廃棄物政策に於ける理念の後退と言わざるを得ない。
     今日、私達に提起されている問題は、廃棄物に起因する自然環境・生活環境の破壊・汚染等の防止をどのようにして実現するか、長野県の良好で豊かな自然環境をどう保全していくかにある。
     そのためには、生産・企業活動の出発点において、廃棄物の発生そのものを抜本的に減らして行くこと、資源としての再活用を図ること、すなわち「発生抑制」と「再資源化」とが総体として進められることこそが第一に必要である。まず、廃棄物を「できるだけ燃やさない」「できるだけ埋め立てない」ことを、条例の基本に据えるべきである。
     また、発生抑制・再資源化計画を策定・実行する際には、県民参加の第三者機関を設け(仮称・計画策定委員会)、計画を絵に描いた餅にさせないために、計画目標が達成出来たかどうかを、計画策定委員会と県民が随時チェックし、見直す仕組みを条例に入れる必要がある。
     更に、廃棄物処理施設の設置については、「法による手続きの前に、発生抑制・資源化計画に照らし合わせ、それに反した工事を知事が差し止めることができる」など、施設建設を全県的な発生抑制・資源化計画とリンクさせる仕組みが、条例に盛られるべきである。
     

  2. 県民の生活環境を守る

     今回の新条例案では、住民(居住者)の生活環境を守るための条例なのか、廃棄物業者や行政(県、市町村)のための条例なのかが明らかでない。住民のためを第一義とした廃棄物条例でなければ、意味がない。
     また、新条例案では「この条例は、廃棄物の適正処理の確保、並びに廃棄物の処理に関する地域の紛争防止を目的とする」となっていて、これでは住民を守るものかどうか分からない。「適正処理」の「適正」が具体的に明示されていなければ、判断を下す県や事業者の主観によって大きく左右されてしまうし、紛争さえ回避できればいいとも読める。
     そもそも、なぜ条例が必要なのか。廃掃法の不備を補完するのが条例であるなら、憲法の生存権に照らして考えるべきで、それは住民の生活環境を守ることに他ならない。「県民の生活環境を守るための条例である」ことを明記するべきだ。
     条例の策定以前に、まず、廃掃法を最大限に活用しているのかが吟味されなければならない。廃掃法が最大限に活用され、それでも住民の生活環境を守れなかった事例をもって、初めて条例化が要請されるのではないか。

  3. 県民主体の廃棄物政策

     新条例ができればきちんと運用されるのか。本来条例は、廃棄物紛争で苦労してきた住民と、それをサポートしてきた行政との共同作業として、成立するのが望ましいものである。
     しかし実際には、住民は行政の不作為に泣かされることが多く、条例さえできれば直ちに住民が守られるようになるとは思えない。場合によっては条例が行政の不作為の口実に使われたり、むしろ廃棄物業者を守るものとして使われることもあり得る。であれば条例を作ること自体が、無駄な時間とコストを費やすことになってしまう。
     まずは、行政(県職員)が使命感を持って廃棄物問題解決に取り組める環境をつくるとともに、住民との信頼関係の醸成が必要なのではないか。それには、行政がどういう理念を持って廃棄物問題に取り組むべきかが端的に示されるべきであり、住民と行政との理念の共有の方策を探ることが鍵となるのではないか。
     そのためにも、"住民の参加"や"住民によるクロスチェックの仕組み"を、行政側が避けてはならない。「県民参加でつくり実行する発生抑制・再資源化計画」「廃棄物処理に関して、環境や健康面での調査や監視活動をするために、県民からの申請で知事が認定する"県民環境協議会制度"」「廃棄物の不適切処理や不法行為について、住民が行う知事への "行政権限発動請求権"」「自分たちの地域は自分たちで守ろうとする地域住民と県が費用を出し合って行う"環境モニタリング制度"」は、県民主体の廃棄物政策を行う上で、大事なツールになりうるものであり、条例には、これを盛り込むべきである。

  4. 補足──発生抑制・生活環境の保全・県民主体は3点セットでないと意味がない

     上記の1〜3は、どれも相互関係にあり、どれか一つが欠落していても、実現は出来ない。「生活環境の保全」は、「発生抑制」政策によらなければ、もたらされないものであり、また「生活環境の保全」も「発生抑制政策の実現」も、「県民が主体」でなければ実現できないものである。

<条例案に入れるべき内容>

  1. 一廃・産廃を含めた総体的な廃棄物施策と市町村との連携

     今回の新条例案では、廃棄物処理施設設置の計画協議制度に於いて、その対象を産業廃棄物のみに狭め、「市町村設置の一般廃棄物処理施設」を対象外としている。しかし、一廃・産廃を含めた廃棄物問題全体に、どう対処して行くかの"総体的な施策"が必要であることは、廃棄物をめぐる現状をありのままに見れば明らかである。
     また、市町村の一般廃棄物処理施設での「産廃併せ処理」が、国の法で認められるようになった中で、市町村が過大な処理施設を建設して燃やすゴミが足りなくなり、産廃が市町村設置の一廃施設で永続的に処理されてしまう可能性もある。
     市町村と連携して、「発生抑制」「生活環境の保全」「県民主体の廃棄物政策」を進める意味から、市町村設置の一般廃棄物処理施設を、発生抑制・資源化計画の観点からみていく仕組みを、条例に盛り込むべきである。もし、計画協議制度の対象から外すなら、それに代わる制度が構築されなければならない。

  2. 環境保全を担保するための住民同意

     今回の新条例案の施設建設にかかわる手続きで、これまで要綱の中で必要とされていた「施設周辺住民との同意書添付」が外されたことは、新条例案が目的とする「廃棄物の適正処理」が有効に機能するのかとの懸念を、拭い去ることができない。
     また、新条例案では、「生活環境上の利害関係者や市町村長から生活環境保全協定の締結を求められたときは、これに応ずるよう"努めなければならない"」と、「協定締結」が努力義務になってしまっている。
     更に、最終的な施設建設承認について、「知事は、事業計画者の報告、利害関係者又は関係市町村長の意見及び指針への事業計画者の対応を総合的に考慮のうえ、各事項について”問題がないと判断したときは承認し”」とあるが、住民同意書の添付を不要としたことよって、住民の「生活環境保全」への要求は排除して、企業の要求のみが「適法性」を装うことになる恐れがあると考えざるを得ない。
     「住民同意」こそが、企業活動による廃棄物の環境負荷を抑止し、良好な環境保全を実際に担保するものであり、県条例は何よりもまず、住民・県民の生活環境・県の良好な自然環境を保全することに基点をおくべきであるという観点からしても、「住民同意」を外すべきではない
     現行の「住民同意」制度にも問題がないわけではない。それを補完する仕組みとして、施設設置について、「発生抑制・資源化計画策定委員会」「施設周辺住民」「事業者」が"公開の場"で議論し、「県民環境協議会や一般県民」も意見を言える計画協議制度が必要である。
     しかし、今回の新条例案の計画協議制度はそのような仕組みにはなっていない。知事が「関係市町村」や「事業者」、必要に応じて「利害関係者(施設周辺住民)」のそれぞれから意見を聞いた上で、知事意見を述べるというもので、知事の姿勢次第となってしまっており、これでは条例化の意味がない。
     従って、民主的なルールの中で公開協議が行われ、その結論の報告を受けて、知事が施設の是非を判断する仕組みにする必要がある。もし、今回の新条例案のような計画協議制度であるなら、「住民同意」は外すべきではない

  3. 勧告だけでなく命令まで行える、実効性のある条例に

     新条例案では、「排出事業者の責任」について、勧告、発表までに留めてしまっている点で、実効性に欠けるものになってしまっている。
     実効性を伴った条例とするならば、廃棄物の処理が適正に行われるよう、知事の権限としての『措置命令発動も含む』ものにしなければならない。