村井知事への申し入れ全文 08/01/15

平成20年1月15日

長野県知事 村井 仁 様

長野県議会 あおぞら 北山早苗

長野県平成20年度の施策、及び予算編成に対する提言・要望

     日頃は、県政発展のためにご尽力頂き、感謝申し上げます。
     前県政においても現村井県政においても一貫して、あおぞらの北山早苗は、無駄な大型公共事業を削減して財政の再建を行いつつ、環境・福祉・教育施策の優先と、更なる県民益をもたらす改革を進めるために、県民の目線に立った提言を行って来ました。
     今回、県から出された平成20年度予算の要求概要は、長野県観光の復興、医師確保、間伐に力を入れたいという点などに意気込みは感じましたが、県政の経営責任者である知事として時代の流れを敏感に感じ、求められているものを実現するための政策を、職員とともに創出するという意欲に欠けているように思えました。
     松本地域の新聞によれば、松本・木曽地域で経営者に行った経済アンケート調査の結果では、村井知事の経済政策を評価するという答えは10%に満たないものでした。日頃、知事は県職員組織の力を活かした県政運営を行うとおっしゃっていますが、組織の長としての知事に留まることなく、時代のニーズに職員とともに果敢に立ち向かう経営者としての知事が求められているのではないでしょうか。
     そこで、その観点からいくつかの具体的提案をさせていただきます。今後の施策、及び予算編成に反映されますよう、要望します。


    1、地球温暖化防止のためのCO2削減、及び、廃棄物の発生抑制実現のために、長野県からできうるもっと具体的な施策を創出し、予算化すること。

     地球的規模の課題であるCO2削減と、国内の重要課題である廃棄物の発生抑制とは、密接な関係にある。どちらも、大量生産・大量廃棄というこれまでの国策を見直し、企業の社会的責任を求めることを抜きにして、解決はできないものであるからだ。それには、いままでの、住民のモラルのみに頼るような場当たり的なやり方ではなく、あるべき姿を描いた上での政策的な誘導が必要である。
     残念ながらヨーロッパ型のこのような政策誘導を、国に期待するのは今の所は難しい。しかし、住民の暮らしに直接かかわる地方自治体として、このまま手をこまねいているわけにはいかない。とりわけ、未来に残すべき豊かな自然環境を有する長野県として、「CO2削減と、廃棄物の発生抑制」に真剣に取り組み、発信することで全国に広めて行くよう、要望する。
     長野県の中期総合計画には、「参加と連携で取り組む地球温暖化対策の推進」「資源循環型社会の形成」が掲げられているが、20年度予算の要求概要を見た限りでは、「減CO2(げんこつ)アクションキャンペーン事業」「資源循環システム構築事業」があるものの、具体的内容的に乏しいように思える。「企業の社会的責任としてのCO2削減と廃棄物の発生抑制を求める」社会システムに結びつくことが、イメージとして湧いて来るような具体的施策の創出と、予算化を求めたい。

     そこで、国の政策に頼らなくても、長野県が市町村や県民とともに実践可能な、一例を挙げさせていただくので、検討されたい。

    <商品の環境負荷として、「生産〜販売までのCO2負荷」と「包装などの廃棄処理費用負荷(リサイクルも含む)」を、消費者に知らせる>
    ・イギリスのスーパーでは空輸農産物に空輸シールを貼り、CO2負荷の高いことを知らせて販売したところ、消費者はできるだけ地元のものを買うようになった。シールやショーカードなどで、『生産〜販売までのCO2負荷や、包装などの廃棄処理費用負荷の情報を公開する』ことにより、消費者はそれを参考に、負荷の少ないものを購入することで、環境を守るための行動ができる。
    ・県が費用を出して、環境NPO(NGO)や大学などと連携して第三者機関をつくり、上記の環境負荷情報を公開するための準備をし、協力店や協力市町村とともに、できる所から始め、商品の種類や販売店舗を増やし広めて行く。
    協力店には減税措置を行い誘導する。最初は県税の減税を行う。広まって来たら、市町村にも減税の協力を求める。(廃棄処理費用が少なくなれば、それは市町村財政支出の節約につながるため、減税は理にかなう。)
    ・商品の種類や販売店舗が県内に広がり、環境負荷の少ない商品を買う行動が県民的運動になれば、商品の生産者はものを売るために環境負荷の少ない商品を生産するようになり、また販売者も環境負荷の少ない商品をより積極的に販売するようになる

     ロンドンスクール・オブ・エコノミクスの教授で、世界銀行のチーフエコノミストやイギリスの経済担当政府特別顧問を歴任した、ニコラス・スターン博士の著書『スターン・レビュー』では、温暖化の経済効果を試算した。それによると、もしこのまま何の対策もとらなければ、異常気象による災害などで経済活動に深刻な影響を及ぼす。これは世界のGDPの20%、世界大戦並みのスケールの被害額に相当するもの。しかし、世界中で対策を進めれば、そのコストはGDPの1%で済むと試算している。
     上記に挙げた施策事例は、「CO2削減と、廃棄物の発生抑制」に真剣に取り組もうとする職員のやる気さえあれば、わずかなお金でできることである。
     また、スターン博士は「CO2の排出情報を積極的に消費者に知らせることは、企業の責任である」と述べている。そのような社会をめざし、政策的誘導をぜひ長野県から初めて欲しい。
     なお、政策を進める際のアドバイザーには、『ごみを売らずにサービスを売る!“環境経済政策と拡大生産者責任”』の講演をされたり(講演録がゴミ環境ビジョン・21から出ている)、『環境を守るほど経済は発展する(朝日新聞社)』の本を書かれている、千葉大助教授の倉坂秀史氏を推薦したい。

    2、豊かな自然環境を守り、将来に良好な環境を残すための人材育成について、具体的施策を実行すること。

    ・ドイツや北欧など環境先進国へ、職員を研修派遣する。先進地の視察をすることで、意識が変わる。できれば、市町村と連携し市町村職員の派遣も行う。
    ・北欧のような自然体験型の環境教育を進める。また、滋賀県の事例を参考に環境学習支援センターを設置する。これらについては、19年度予算の要望の際に詳細に説明してあるので、引き続き参考にされたい。

    3、上高地など、将来に残すべき自然資源の保護と観光や防災のあり方について、様々な立場から協議する場を設置すること。

     長野県中期総合計画に「環境との共生」を掲げているが、具体的施策は殆どない。
     群馬県みなかみ町新治地区北部に広がる約1万ヘクタールの国有林「赤谷(あかや)の森」では、地元住民で組織する赤谷プロジェクト地域協議会、林野庁関東森林管理局、日本自然保護協会(NGO)が協定を結んで、生物多様性の復元と持続的な地域社会づくりをめざしている。
     渓流の復元のために、最大の阻害要因がダムであるため、赤谷プロジェクトでは、エリア内で特に多くの治山ダムが設置されている茂倉沢を、渓流復元のための試験地に提案した。この提案を受けて、関東森林管理局では、渓流復元と防災機能の両立をめざす新たな治山計画の策定を始め、まず、穴があいて壊れた治山ダムを撤去することにした。
     「赤谷の森」の主要な谷には、訪れた人々を癒す秘湯の一軒宿があり、その宿の経営者たちが地域協議会の幹事として頑張っている。また協議会は、よその沼田市などからも自然保護に関心のある市民たちが参加し、外に向かって開かれている。
     総合計画に掲げた『環境との共生』が絵に描いた餅にならないよう、国が自然や景観に配慮しているからというような姿勢にとどまるのではなく、長野県として"自然環境という宝"を次世代に残すために、赤谷プロジェクトの取り組み姿勢に学ぶ必要がある。まず、赤谷と同じ国立公園内にある上高地について、自然保護と防災、観光のあり方などを、国・県・市、観光業者、自然保護市民団体、信大山岳研究所などが一堂に会して話し合う場をつくるべきである。

    4、格差社会の是正にために、教育の機会均等から保証する対策を早急に検討し、実行すること。

     県教委の資料によると、経済的理由で県立高校の授業料を免除される生徒の割合(減免率)が、いわゆる「進学校」では低い傾向に、大学進学実績の少ない学校では高い傾向にあり、その差が年々広がっていると報道された。山口県教育長は、「教育問題にとどまらず社会問題としてとらえるべき時代に入ったのだと思う」と話しているが、長野県として、格差社会の是正を、まず教育の機会均等を保証することから行うべきである。子供たちが将来への希望をもって学べる長野県をめざし、早急に対策を検討し実行するべきである。
    ・格差社会の是正にために、貧困の連鎖を断ち切ろうとする、イギリスの低所得世帯の子供たちへの教育支援の政策事例を、参考にされたい。

    5、真に必要な公共事業を優先的に行うこと。将来の人口減を見据えた道路政策を実行すること。

    ・100年に一度の大雨による、50cm以下の浸水被害を防ぐために浅川ダムを造るような治水対策はやめ、浅川下流域や松本市街地の1m以上、場所によっては5mの浸水被害への対策などを優先するべきである。厳しい財政状況からしても、税金を投入する順序を間違わぬようにして欲しい。
    ・浅川による外水被害は、実際には200〜1000年に一度の被害とも言われている。「基本高水に相当するとされる流量」の見直しを、行うべきである。そもそも、信濃川などの大河川に適用される基本高水流量の計算式を、信濃川にとってはほんの小さな河川である浅川に、当てはめたこと自体が間違いである。
    ・道路整備について、人口減を考えた時に20年後には道路は必ず空くはず。そこで、新たな道路や大掛かりな道路改良計画には手を付けず、厳しい財政状況からしても、まずは今困っていることを解決する手だてを講じるべきである。例えば、松本の国道19号では、4車線計画にこだわるばかりに国も渋滞対策を行わずにいる。松本南部(村井〜平田間)の慢性的渋滞の対策では、4車線にするというような大掛かりな計画ではなく、ポイントの改良で渋滞を緩和させるような対策を実行するべきである。

    6、信州まつもと空港の活性化のために、チャーター便の数を増やすべく、補助金制度などで民間活力を導入する具体的施策を実行すること。

     まつもと空港利用のチャーター便による海外からの旅行ツアーは割高になるため、客が集まりにくい。それを補助金でカバーする必要がある。海外からの観光客が県内に落とすお金は、投資した額の何倍、あるいは何十倍にもなり、必ず県内経済の活性化につながる。
     補助制度の例を挙げてみたい。
    ・松本市は中国からの旅行者に片道1000円の補助を出しているが、県もこれに上乗せの補助を行う。
    ・まつもと空港を利用して、海外から観光客を乗せてきた便で日本からの観光客も運ぶ企画の場合、日本人を乗せて海外へ飛ぶチャーター便にも一機あたり10万円の補助金を出す。
    ・海外からのチャーター便で信州を巡るツアーを組む企画を、日本のエージェントに一企画100万円で、年間10企画までというような形で補助する。

    7、報酬や給与の削減を行うこと。

    県議会議員歳費については、現行条例よりも高くなることのないよう、報酬等審議会提言の5%減ではなく、最低でも10%、できれば20%以上の削減を行うような提案をされたい。
    ・県職員の給与について、人事院勧告は国家公務員の給与を水準としているが、首都圏と地方では生活にかかる費用に差があり、また県民所得にも差がある。また国内でも指折りの借金県である長野県は、勧告に甘んじることなく、独自な職員給与削減策をとられたい。新聞記事によれば、人事院勧告を完全実施しなかった府県が19もあり、さらに完全実施したところでも、ボーナスや給与カットをしている自治体もある。
    給与を上げるのではなく、仕事と給与を分け合うワークシェアリングを行うべきである。県の行財政改革プランでは、1500人の職員を削減すると打ち出しているが、世の中の流れが正規雇用を減らしパートや派遣で賄う方向の中で、若者や県民の雇用問題、ワーキングプアの問題などを考えたときに、一人でも多くの県民が正規の職に就けるような長野県になるよう、県が率先垂範すべきである。

    8、小さくても輝く町村、地域への支援を強化すること。

    ・自律を選んだ、あるいは選ばざるを得なかった小さな町村の支援策の充実をはかるべきである。県職員の複数派遣や、地域振興局体制の強化を行うこと。村井知事の公約である、81の市町村を輝かせるには、必要不可欠である。
    地域発元気づくり支援金などによる、地域や住民が主体となって行う事業への更なる支援の充実を望む。特に、市町村を通して申し込む枠とは別途に、地域の住民団体やNPOなどが直接県に申し込めるような枠を設けるべきである。ここに、県が事業支援をする意味があるはず。また、申請のための書類など手続きが難しく、申請をあきらめた団体もある。金額は少額でも良いので、はじめの書類などの手続きは簡素化し、多くの団体が支援を受けられるよう工夫されたい。むしろ成果の報告をしっかりと求めるようにしたほうが、良い取り組みが県内各地に広がるきっかけとなる。

要求概要(長野県ホームページ)は以下をクリック

平成20年度当初予算の各部局からの要求概要
〜”活力と安心” 人・暮らし・自然が輝く信州をめざして〜